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砧形花入

(きぬたがたはないれ) Kinuta-shaped flower vase

金重陶陽

(かねしげ とうよう) Kaneshige Toyo
1956-57年
H 23.9cm W 13.9cm D 13.9cm

備前焼窯元六姓の一つ金重家の長男として生まれた金重陶陽は、細工物制作を得意とした父楳陽について作陶を始め、若くして伊部を代表する「でこ師」であった。しかしながら、日本文化の再評価の機運が盛り上がるなか、備前焼の本質は土味にあるとして、金重は36歳で轆轤師に転じ、桃山備前への回帰を掲げて、土の調整、窯の改造、茶の道の探求など研鑽の結果、桃山備前を復興し、中興の祖と呼ばれる。
釉薬を使わない備前焼において独特の土味を得るには、土の吟味と窯の焼成によるところが大きく、土味を殺さないためにも水簸した土を使わず、また田土の層14~15センチの土にこだわり、探し歩いた。窯の焼成は、父楳陽からの「窯づめで窯を焼いておけ」の言葉の通り、火に逆らわない、火の通りのよい窯づめを工夫、「土に素直に火に素直に」を実践した。
「鬼の腕」と呼ばれる形をもつ本作品は、てらいのない素直な轆轤づくりで、胴裾には金重らしい箆づかいが見られる。上に引き上げようとされた轆轤づくりではなく、ねっとりとした備前の土が内側から押し出されているかのようである。大小に点在するヌケからは火の走りが感じられ、端正な仕上がりのなかに存在感のある作品となっている。

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