今織部茶垸
(いまおりべちゃわん) Tea bowl, "Ima-Oribe" type玉置保夫
(たまおき やすお) Tamaoki YasuoH 10.0cm W 13.5cm D 11.0cm
多治見工業高等学校図案科に学ぶ。グラフィックデザイナーを夢見て美大を目指すが、東京での浪人中に桃山の織部の名陶展に出会い、織部に目指していたグラフィックの世界が土の上に見事に表現されているのを発見する。紙の上でのグラフィックから土の上のグラフィックに方向転換し、県の陶磁器試験場に入る。1965年(昭和40)に日本伝統工芸展で初入選して以降、本格的に美濃の桃山陶の研究の道に進む。1968年(昭和43)には日本工芸会正会員に当時最年少(27歳)で認定された。志野・織部の研究に邁進し、なかでも織部の技法における研鑽と成果は顕著で、材料および、原料、道具等を工夫、考案し桃山期の織部陶の復元に成功する。また桃山陶の技法を継承しながらも現代の美意識にかなう独自の意匠を求め、現代織部「今織部」の世界を創りだしてきた。現在はガス窯等、いくつもの窯を駆使し、個性豊かな現代織部を追及し続けている。本作は玉置が取り組み続けている独自の今織部スタイルの茶碗で、黒、白、灰、緑、赤と様々な色が模様となり、地となって玉置独特の今織部を作り出している。高台周囲の釉が切れた部分の土をみると土に赤土が練りこまれているのもわかる。玉置は2008年に岐阜県の重要無形文化財「織部」保持者として認定されているが、まさに現代に生きる織部に取り組み続ける玉置の技術とデザイン性がよく表れた作品である。