利休青紫志野割高台茶垸
(りきゅうあおむらさきしのわりこうだいちゃわん) Tea bowl with splitted base, Rikyu-style bluish purple Shino type林正太郎
(はやし しょうたろう) Hayashi ShotaroH 11.0cm W 14.6cm D 14.2cm
林正太郎は土岐商業高校を卒業後、陶芸家の兄・故林孝太郎(1940-81)に師事し、美濃の桃山陶研究の道に入った。志野の特色である緋色と梅花皮の表現を大切にしながら、志野では難しいとされる大作の制作や日本の四季の自然をモチーフにした絵画的表現を追求している。
自身の作品づくりの原点とするのは、土岐市内で開催された展覧会でみた、桃山時代の名碗・重要文化財《鼠志野茶碗 銘峯紅葉》(五島美術館蔵)だという。この桃山時代の鼠志野を基本に、鼠志野に灰被りした状態の色合いをつくり出すべく、色々な鉱物を混ぜ、焼成方法と釉薬の掛け合わせなどを研究している。厚い釉掛けによる釉調と力強い造形に特色をもち、絶妙な色合いで魅せる「正太郎志野」は、この志野研究の成果である。桃山陶の志野の制作技術の解明やガス窯による志野の焼成技術、新しい時代の志野の制作技術の研究開発に大きく寄与し、2002年には岐阜県重要無形文化財「志野」保持者に認定された。
本作は2018年の夏に焼成した作品である。深い藍色の地に厚く掛かる白い釉薬にはほのかに赤く発色する部分も現れるなど複雑な色合いをみせ、割高台は釉肌の表現とともに力強い大胆なフォルムをつくりだして、まさに「正太郎志野」を表す作品となっている。