ワークショップ「久々利の土を焼いてみよう 野焼きの日」
2022年7月2日(土)9:00−15:00 可児郷土歴史館
陶芸家の阿曽藍人さんに土づくりを教わり、そうして作った粘土を使ってとっておきの作品を作った可児市立東明小学校の1年生たち。この日は彼らの作品を「野焼き」で焼成しました。
野焼きとは、乾燥させた作品を、窯を用いずに、薪などの燃料を燃やし、直接焼く方法です。窯が存在しなかった頃、人々は野焼きでやきものを作っていたようです。
この日は早くに梅雨が明けてぴかぴかの晴天。多治見市では前日に最高気温が40度を超えるなど、たいへんな暑さの日でした。そのなかで火を焚くのですから、圧倒的な熱量です。熱中症対策は万全に行いましたが、それでも汗だくになりながら一日を過ごしました。
野焼きの魅力は、粘土が火に焚かれ、やきものになっていく過程を直接見届けられること。今回は、大きな薪を燃やしで熾火を作り、徐々に炎に近づけながら作品の温度を上げていき、最後には作品を炎の中に入れて焼き締めていくという流れで作品を焼いていきます。
最初は、中央で大きな薪を燃やしながら、作品をその熱でしっかりと乾燥させていきます。作品に水分が残っていたり、急激に温度が上がったりしてしまうと、爆発やひび割れの原因となるためです。
しっかりと乾かし、徐々に温度を上げるため、途中で作品の向きを変えます。ここは小学生のみんなのお手伝いチャンス。軍手をはめて、はじめて間近で感じる炎に「あつい!」と声をあげながら、慎重に作品を動かします。
作品の中の温度が上がり、また、薪の火が大きくなったところで、作品を中心に寄せ、炎の中に入れていきます。ここからはもう素手では触れない熱さ。阿曽先生は、耐熱の靴と火ばさみを使って、慎重に作品を動かしていきます。
作品は炎の中で徐々に焼き締まり、色が黒っぽくなっていきます。
点火から5時間ほど経った頃、さらに薪を追加して、炎の勢いを強めます。炎天下、ごうごうと燃える炎を前に、「キャンプファイアみたい」「とっても熱い!」「ちょっと怖い」と素直な感想が聞こえます。やきものを焼くことがいかに大変な仕事か、体感する一幕でした。
この攻めの炎が収まってきたところで、ついに作品を取り出します。一見、火は落ち着いているようですが、6時間以上も燃え続けた炎の熱量は最高に達しているところ。先生は革手袋と火ばさみで作品を取り出す作業の合間にも、手を水につけて冷やし、やけどをしないようにしていました。
灰の中から取り出した作品をレンガの上に置くと、焼く前とは異なる「コツン」と高い音がします。冷ますために水に浸けても、粘土のように溶けません。そして何より、オレンジや赤、黒、茶色、それぞれにまったく異なる色が現れたことに驚きの声があがりました。この色はそれぞれの土の性質、それらの混ざり具合や、炎の当たり具合によって現れる、世界にひとつだけの景色なのです。さっそく作品を手にした子は、お互いの作品のいいところを見せ合ったり、どうやって使うか話しあったり。「硬くなってる!」「思っていたのと全然違った色で不思議」「やきものになってうれしい」という声も聞かれました。
なお、野焼きの燃料には主にセラミックパークMINOの間伐材を利用しました。実は、途中で薪が足りないかも…という不安がよぎったのですが、なんとご近所にお住まいの参加者さんが薪を提供してくださいました。(ありがとうございます!)
多くのみなさんのご協力のおかげで、土から薪まで、どこまでも地元の素材で出来上がった、まさしく「久々利焼」になったのではないでしょうか。
講師の阿曽先生は、「火の色、状態、圧倒的な熱さや、焼く前と後での作品の感じの違い、待っている間の長い時間など、今日の体験を通じて、やきものが自然や人の手、さまざまな力を経て生まれていることを感じてもらえていたらうれしい」「みなさんの素直な反応がとても新鮮で、自分にとっても発見の多いワークショップでした」とよく日に焼けた顔で振り返りをしてくれました。
作品が、炎のなかで呼吸をしながら色を変え、徐々に土からやきものになっていく様子はとても不思議でうつくしく、思わず暑さを忘れて見入ってしまうものでした。参加してくれたみなさん、そしてここまで一緒に作品を作ってきた東明小学校のみなさんの心にも、あの土と炎の色が残っていたらいいなと思います。
(学芸員/林いづみ)
―――基本情報―――
久々利の土を焼いてみよう 野焼きの日
講師:阿曽藍人氏(陶芸家)
日時:2022年7月2日(土)9:00~15:00 (時間内出入り自由)
参加者:66名
場所:可児郷土歴史館
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